新規事業の一翼を任された
システムエンジニアの奮闘

グループIT部坂手 美佳

新規事業の一翼を任された
システムエンジニアの奮闘

グループIT部
坂手 美佳

柔和な笑顔に人柄がうかがえる坂手美佳は2023年1月、当社に中途入社した。前職の化学系メーカーのIT子会社では、SE(システムエンジニア)として販売管理システムや商談アプリの開発、保守業務、管理業務を担当。そこでは、プロジェクトリーダーとしての責務を果たしていた。

「大学院まで化学を専攻していました。でも、新卒で就職するまでプログラムを見たこともなければ、書いたこともなかったです。パソコンに苦手意識はないけれど、高度な知識はありませんでした。だから、新人研修で勉強しました。」

屈託なく話すが、たゆまぬ努力で猛勉強を続けてきたのだろう。当社に入社すると、これまでの経験を活かすように販売に関わる基幹システムを担当する。それと同時に、当社の新規事業で開発したPHR(Personal Health Record)管理アプリ「SaluDi(サルディ)」にも携わる。SaluDiは、バイタルデータや既往歴、処方箋の履歴などを記録することで、日々の健康管理や受診時の適切な診断などに役立つスマートフォンアプリだ。

当社は、兵庫県養父市が推進する「養父市デジタルヘルシーエイジング事業」に参画している。養父市デジタルヘルシーエイジング事業とは、2023年1月からはじまったスマートシティ実現に向けた取り組みのひとつだ。養父市は「いつまでも元気で安心に暮らせるまちづくり」を目指す上で、その事業のひとつに市民の健康状態を記録する当社のPHR管理アプリ「SaluDi」を採用した。坂手はSaluDiが地域の人に親しまれ、利用してもらえるように当社の窓口として尽力している。

測定したバイタルデータは、市や医療従事者と連携することで治療や市のサービスに活かされる。そして、スマートフォンを持たない高齢者をおざなりにしないため、市内に18エリアある自治協議会の集会所にタブレット端末を設置。そこには、体重計や血圧計を常備し、誰でも記録できるようにサポートしている。集会所までの外出の機会を促すことは介護予防にもつながり、地域全体で市民を支えようという試みだ。

養父市デジタルヘルシーエイジング事業の概念図

「養父市デジタルヘルシーエイジング事業は、私が入社した時期と同じくしてはじまりました。その新規事業を、入社まもない私が任されました。それは驚きとともに、不安でもありました。実際に養父市へ足を運び、市の担当者の方々とやりとりをするなかで、SaluDiの仕組みや使い方をわかりやすく伝え、説明する。最初は手さぐりで、SEとしてこれまで経験したことのない試みでした。」

人と話すことが好きだと話す坂手は、このプロジェクトにやりがいを感じている。高齢者をはじめIT用語になじみのない人たちに対して、どのように伝えればいいのか。坂手は各々の自治協議会を訪れ、バイタルの計測に足を運んだ高齢者に寄り添い、少しでも理解してもらえるよう懸命に向きあっている。そうしたヒアリングを重ねた上で、養父市の自治協議会向けタブレットは画面の文字を大きくし、無駄な情報のないシンプルな仕様にカスタマイズされている。少しでもタブレットに親しんでもらえるように心がけた、坂手を中心にした試みだ。実際に相手の顔を見て、問題点を一緒に考える。そして、どうすればそれに応えることができるのか。坂手はなによりも地域の声に耳を傾けた意思の疎通を大切に考え、気軽に相談してもらえることに喜びを感じている。

「自治体、企業などそれぞれの環境に応じた提案を自分から積極的に働きかけ、これまで以上にSaluDiの活用の幅を広げていく予定です。そのために重要なのは、利用者の立場になって考えることです。コミュニケーションを通じて、SaluDiが“情備薬”として健やかな暮らしのための“一錠”になれると信じています。」

「情備薬」とは、「情報を備えた常備薬」という意味で、沢井製薬が発信している造語だ。当社はデジタルヘルスの取り組みとして、医療や健康情報の活用により人々の暮らしや健康、QOL向上への貢献を目指している。SaluDiは情備薬として養父市にとってなくてはならない一錠になる可能性を秘め、そのためには一人でも多くの人に抵抗感なく、使ってもらわなければならない。今後もさまざまな企業や自治体と協力して、普及活動に邁進していきたいという。

「現場に近い立場で業務ができて、新たなことにチャレンジしたい。」

坂手の入社動機だ。その思いはすぐに実現し、充実した日々を過ごしている。前職ではプロジェクトリーダーとしての責任が大きく、苦しい時期もあったという。現在では上司が、そしてグループIT部の頼もしい仲間が一緒に走ってくれる。そんな心強い職場で、全力で仕事に打ち込んでいる。

※この記事は、2024年1月に取材した内容をもとに作成しています。