データドリブン経営を支える
BIシステム刷新プロジェクト

グループIT部 マネージャー山口 岳文

データドリブン経営を支える
BIシステム刷新プロジェクト

グループIT部 マネージャー
山口 岳文

グループIT部でマネージャーを務める山口岳文は高校、大学で情報工学を学び、システム開発会社に就職。そこでは、アプリケーションの開発や携帯電話関係の組み込みプログラマーとして活躍した。その後、化学系メーカーのIT子会社に転職し、基幹システムの維持運用、システム改修の要件定義から設計、開発、テストまで幅広く担当。満を持して、2014年6月に当社に中途入社した。

「自社の課題解決や事業を推進するために必要な要件を検討し、企画やシステムを導入する立場の社内SE(システムエンジニア)になりたいという思いでした。今後、ますます進む超高齢社会に対して、医療の分野で貢献できる製薬会社だったというのも理由のひとつです。」

その頃、当社では実消化および実消化データの集計、分析を行うBI(Business Intelligence)システムの刷新を進めていた。実消化とは、製薬会社から卸売業者を経て、病院や薬局等の医療機関に販売した数量の実績のことで、営業部門の意志決定を左右する重要なデータだ。入社した山口が最初に関わったプロジェクトがそれだが、「データドリブン(収集したデータをもとに意思決定を行うこと)」への意識が希薄だったと当時をふり返る。続けて、個別最適を意識し過ぎた反省点のあるプロジェクトだったとも話す。

※BI(Business Intelligence)システム:社内のさまざまなシステムから発生するデータを収集・加工・集計し、ユーザーに必要な形で提供することで、意思決定や日々の活動のきっかけとする仕組み

現在、当社ではDXを通じた企業理念の実現に向けて、「Sawai DX」としてさまざまな取り組みを進めている。その試みのテーマのひとつが、「データドリブン」の実現だ。それに応じて、「SDDP」(Sawai Data Driven Platform)というプロジェクトが発足。データ分析に基づいた経営判断のための新情報活用基盤を構築している。それに伴い、データ分析環境の整備が進むなかで、BIシステムの刷新を山口が先導している。

「入社以来、社内システム導入の経験を積むことで立場も変わりました。かつて担当したBIシステムのプロジェクトでは、何が足りなかったのか。そうした反省点を鑑み、刷新を進めています。これまではデータ分析の際に、複数の担当者がそれぞれの経験から分析することで見るべき軸が異なることもあれば、伝え方にも差が出ました。しかし、新BIシステムを導入すると、皆が同じ視点で会社として見るべきものが定義され、会社の現状を可視化することができます。見るべきデータが共通化すると、そのデータに基づいて営業現場は迅速に、正確に分析ができるようになります。そういう仕組みを提供したいと考えています。」

新BIシステムの導入により、この製品はこういう理由で売れている。だから、こうしよう。ある社員はこうすることで、成果をあげている。だから、ほかの社員もそれを参考にしよう。そういった、戦略的な考察が可能になるという。

「営業部門にとって、スピーディーな戦略はとても重要です。正確なデータに基づいて、迅速に戦略を立案する。そして、意志決定の速度を上げる。SDDPは、そういったかたちで当社に貢献できると思います。」

新情報活用基盤の概念図

※データウェアハウス:企業内の複数システムから大量のデータを時系列で蓄積するシステム

独立系、メーカー系IT企業のSEとしてキャリアを重ねた山口。現在は社内SEのマネージャーとしての重責を担い、これまでSEとして研鑽を積んだ上で、「コミュニケーション」と「合意形成」の重要性を自身にも言い聞かせるように述べている。

「ITだからこそ、コミュニケーションが大切です。それは、日頃から肝に銘じています。人と人との対話ではニュアンスで意味をくみ取り、訂正してくれることもあります。しかしながら、コンピュータでは、“1”は一でしかない。“0.8”を一として理解してくれることはありません。要件は正確に定義する必要があり、曖昧な合意は自身の首を絞めることになります。シビアです。でも、だからこそ、意思の疎通が重要です。」

社員たちに寄り添い、コミュニケーションを通じて会社が何をしたいのかを正確に分析する。そして、さまざまな選択肢から手段を選び、よりよいシステムを提供する。そこに、社内SEのおもしろさがあるという。また、Sawai DXは 「IT活用先進企業へ変革」、「デジタルヘルス事業へ挑戦」、「ITインフラ強化」といった3つのアクション軸で進めている。サワイグループの成長のために、これらの軸をどのように実現するのか。それを検討し、推進していくのも社内SEならではの仕事だと、山口は話している。

「企業理念に掲げている“なくてはならない存在になる”。この思いは、大切にしています。山口と仕事がしたい。そうだ、山口に相談しよう。社員が困ったときに、いち早く手を差しのべることができる。そういう存在になれたらいいなと思います。それは私だけではなく、グループIT部がそういう組織になれるように目標として掲げていきたいです。」

すでに不可欠な存在として、グループIT部で指揮をとる山口。手がける新BIシステムはまもなくリリースするが、それに伴い、データドリブンを支える人材の育成が今後の重要なテーマだという。すぐれたシステムを構築しても、使いこなせなければ意味がない。サワイグループとして今後はどのような体制で臨むべきなのか。システムの屋台骨を支える山口の腕のみせどころだ。

※この記事は、2024年1月に取材した内容をもとに作成しています。