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新任社外取締役メッセージ

社外取締役
三津家 正之

厳しい事業環境を乗り越え、
長期的に人々の健康に資する企業に

新任社外取締役メッセージ

国民にとって必要不可欠な存在となった一方で、
課題が明らかになってきたジェネリック医薬品

日本の医薬品産業のなかで、ジェネリック医薬品は数量シェア80%達成という目標のもと、新薬事業との区分の明確化が急速に進んできました。これは、日本の医療保険制度の持続性を担保するうえで必要な施策でした。またその使用は、患者さんの経済的負担軽減の観点からも推奨され、今やジェネリック医薬品はすべての国民にとって必要不可欠なものとなっているだけでなく、社会全体のSDGsの推進にも様々な側面で寄与しています。

一方で、ふたつの大きな問題点が明らかになってきました。ひとつは、いくつかの会社で製品の信頼を揺るがす事案が発生してしまったことに起因する、品質に対する不安です。もうひとつは、新薬以上に毎年の薬価改定の影響を受けることによる、ジェネリック医薬品業界全体としての事業継続性です。

このような難しい事業環境のなか、新たにサワイグループホールディングスの経営に社外から参画する機会をいただきました。当社は、市場シェア、製品に関わるトラックレコード、財務体質の健全性、いずれの点でも、この難しい事業環境を乗り越え、長期的に成長しつつ、人々の健康に資する可能性を有する企業と考えています。

品質問題は、業界が変化を遂げるチャンス

業界としては、今直面している品質への不安、過剰な製造販売業者数と、それに起因する薬価下落圧力を克服していかなければなりません。このうち品質問題については、業界全体が次のステップに変化を遂げるチャンスとも考えられます。業界各社では、コンプライアンス・ガバナンスと品質を最優先とする体制の強化に資する施策を推進していますが、経営層が生産量や承認獲得期日などについて達成不可能な目標を現場に強いていないか、十分な人的資本の裏付けを供与しているかも、重視すべきポイントです。社外取締役としては、現場のガバナンスの実効性とともに、経営サイドの目標が当社の実力に見合った健全なものかどうかをチェックしていくことが大切だと考えています。

生き残りのカギとなる「人への投資」を注視

2022年度の国内における医療用医薬品全体の売上は10.9兆円と過去最大でしたが、2015年以降のトレンドを見ますと10.5兆円から11 兆円の間でほぼ横ばいで、このトレンドは今後も続きます。高価な新薬が売上・シェアを伸ばすなかで、ジェネリック医薬品メーカーの淘汰・選別は新薬メーカーよりも先に生じると予測しています。そのなかで生き残っていくカギは、市場においてプレゼンスのある生産数量を確保すること、加えて高いコスト競争力と特許切れ医薬品の迅速な開発力の2点だと考えています。

医薬品産業では他の産業以上に、イノベーションにとって大切な要素である「人への投資」と「人財のダイバーシティ」が大切です。新薬事業では、新薬の創製や開発にスペシャリティの高い個人の能力が求められるのに対し、ジェネリック医薬品事業では、生産数量拡大・患者目線の品質・高いコスト競争力を同時に高めていく、別のタイプの継続的イノベーションが必要です。社外取締役として、経営サイドが必要な人的資本に対する投資、特に高いスペシャリティを持つ人財とダイバーシティ確保に力を注ぐことを注視していきたいと考えています。

サワイグループホールディングス 統合報告書2023

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