日本事業(沢井製薬)
- 専務執行投員
沢井製薬株式会杜 代表取締役社長 - 木村 元彦
SWOT分析
- Strength 強み
- 国内有数の供給力
- 独自の製品開発力
- トップメーカーとしてのブランド力
- 安定した財務基盤
- 企業理念に基づく従業員の誠実さ
- Weakness 弱み
- 需要急増に伴う従業員の育成・確保に時間がかかる
- 赤字でもシェア上位の品目が多く、販売中止の経営判断が困難
- Opportunities 機会
- ジェネリック医薬品業界の再編機運
- 高齢化の進行による需要拡大
- ヘルスケア・医療環境ニーズの多様化・高度化
- Threats 脅威
- 毎年薬価改定等による薬価引き下げ
- ジェネリック医薬品への信頼低下
- AGの発売増
- 先進国のなかでは低い成長率
- 原材料のコスト上昇
ジェネリック医薬品業界の変革期を乗り越え、
高品質な医薬品を安定的に供給し続けていきます
日本事業(沢井製薬)
沢井製薬社長就任にあたって ‒‒‒
社内各部門の力を束ねて、変化に対応していきます
このたび沢井製薬の代表取締役社長に就任しました木村元彦です。2016年に当社に入社する前は、住友製薬(現・住友ファーマ)で生産を統括する部門にいました。以前には、バイオ医薬品の研究や、細胞培養商業プラントの立ち上げ、知財の売買、事業開発、購買などの部門を経験し、ヨーロッパ駐在時代にはイギリスの法人立ち上げも行いました。沢井製薬では、2017年から生産本部長として各工場の生産体制の再編・強化、能力増強に邁進してきました。これらの経験を活かし、ジェネリック医薬品業界に求められている品質と安定供給問題の早期解決に貢献すべく、社長の任を拝命した次第です。
当社は、今、大きな変革期を迎えています。毎年の薬価改定、原材料価格の上昇、新製品の安定供給義務に加え、製剤の複雑化で開発の難易度も増しています。新製品を上市する一方で、不採算品も増えるがやめられない。AGも増加し、非常に大変な時期です。また、厚生労働省が制度改革等に関する検討会を立ち上げるなど、多くの変化が見込まれる時期ですので、それにきちんと対応していく必要があります。
こうした状況下では、経営戦略や営業戦略が重要であるとともに、社内各部門が今まで以上に連携を強化し、変化に迅速に対応できる体制を再構築する時期が来ていると考えています。
ジェネリック医薬品は生産品目が非常に多く、日々製造設備を切り替える必要があるなど、品目数が少ない新薬メーカーとは違う製造の難しさがあります。
私の役割のひとつは、戦略を立てて、研究と生産、あるいは営業と生産を連携させ、オーケストラの指揮者のように束ねていくことです。社内外で場を設定し、物事がスムースに進んでいくようにする。そこに私の持ち味であるフットワークの良さを活かしていきたいと思っています。
ピンチをチャンスに変えるために
様々な施策にチャレンジしていきます
2022年度の国内ジェネリック医薬品事業は、薬価改定の影響はあったものの、新製品の売上伸長や限定出荷品の解除により、売上収益は前期並みの163,702百万円となりました。一方で、コア営業利益は先行投資や原価高騰の影響を受け21,425百万円と前期を下回りました。
- 売上収益(国内)/コア営業利益(国内)
また、2023年度も減益計画としました。減益の最大の要因は、原価高騰です。私が生産本部長になってから、毎年製造原価は下げてきましたが、2022年度は、薬価改定分を生産の原価低減で賄えなかった初めての年度となりました。ウクライナ情勢の影響や人件費・光熱費の高騰を背景に、例えば、去年100円だったある品目の原価が105円に上昇するといったように、全体で5%値上がりしました。
原価高騰への対応としては、生産効率のさらなる改善に取り組むとともに、原価高騰に伴う影響分を価格に反映させました。2023年度も卸・販売会社さんにご理解をお願いしています。
このような状況のもと、たとえ不採算品であっても、必要とされる医薬品を患者さんに届け続けるという責任を果たすために、やむを得ず、そのような方策をとっていただいています。このような場合重要なのは、取引先にしっかりと説明責任を果たすことです。前職で購買部長をしていた際、最も大切にしていたのは、会社の現状をしっかり説明したうえでご協力をお願いすることでした。より深い理解を得ることで協力していただける度合いも上がり、信用・信頼にもつながります。そうした対話を重ねていくことこそトップである私の役割だと考えています。
また、ジェネリック医薬品業界ではこれまであまり同業他社との交流がありませんでした。今後は取引先、仕入先も含めた様々なステークホルダーとの連携を今まで以上に深めていくことで、全員にとってメリットのある共存共栄の関係が築けないかと考えています。ありがたいことに業界内シェアがトップである当社への期待は非常に高く、会長、副会長と相談しながら、どのような連携が可能なのか検討していきたいと考えています。
一層のシェア拡大に向けて
生産能力の増強と、人の確保・教育を両輪で進めます
供給不足の解消、生産能力の向上に向けて、トラストファーマテックが約1年の準備期間を経て、2023年6月に予定通り一貫製造品の製品出荷を開始しました。また、第二九州工場では2024年4月の生産活動開始に向けて、新固形剤棟の建設を進めています。これによって、自社生産能力は2024年度には200億錠以上に拡大されます。
- 安定供給力強化に向けた今後の自社生産能力※1
- ※1生産能力の前提:現在の品目数について平日2交代で機械を稼働し続けた場合を想定。外注は含んでいない。
- ※2ステップ2:時期は未定
新製品の工業化が難しくなっているという課題の解決に対しても、生産設備能力の強化が求められています。安定生産にすぐに移行できるよう、生産能力に余裕を持たせて、できるだけ早く工場で商業生産規模の実験を始める必要があるためです。まずはトラストファーマテック本格稼働と第二九州工場の新棟の完成に向けて全力投球していきます。
- 研究開発費
- 毎年100億円以上の研究開発費を計上し、付加価値の高い製品を開発
- 設備投資
- 生産能力向上のため2021年度からの3年間で600億円の設備投資を実施
現在、国内ジェネリック医薬品市場における当社のシェアは、数量ベースで全体の16%ほどで、2030年に向けた長期ビジョンでは、20%以上を目標に掲げています。しかし、当社には、さらにシェアを拡大する使命があると、私は考えています。
そのために重要なのは、人の採用と教育です。離職率をKPIとして注視するとともに、新入社員と年代の近い先輩社員をメンターに任命し、業務指導と合わせて経験を伝えることで、相談相手としています。これらの取り組みによって、正社員の離職率は2017年度の4.8%から、2022年度は3.1%まで低下しました。また、社員が定着してくると、一人ひとりの能力も上がっていきます。多能工化もKPI化し、仕事能力のランクを数値化しています。
これらの結果、私が生産本部長に就任した2017年以降で、人員は大きく増やさずとも、生産数量を1.6倍に増やすことができました。
2020年度 実績 | 2022年度 実績 | 2030年度 (目標) | |
---|---|---|---|
売上収益 | 1,536億円 | 1,637億円 | 2,600億円 |
販売数量 | 133億錠 | 150億錠 | 200億錠 |
販売数 シェア | 15.7% | 16.0% | 20.0%以上 |
生産能力 | 155億錠 | 185億錠 | 230億錠以上 |
当社の強みを活かしながら、
「末長く社会に貢献し続ける会社」にしていきます
沢井製薬の強みは、やはり「なによりも患者さんのために」という企業理念です。この理念のもとで、皆がひとつの方向に進んでいること、そして、対応のスピード感はどこにも負けないと自負しています。この強みを活かしながら、当社を「末長く社会に貢献し続ける会社」にしていくのが、私の目標です。そのために何をするべきかを皆と相談しながら考え、社内外のステークホルダーとも議論しながら、信用・信頼を得られるよう経営に邁進します。
- 専務執行役員
沢井製薬株式会社 代表取締役社長