トップメッセージ
- サワイグループホールディングス株式会社
代表取締役会長兼社長
(グループCEO兼グループCOO) - 澤井 光郎
生産能力を強化し、
業界のリーディングカンパニーとして
品質と人財を基盤とした
さらなる成長を実現します
ジェネリック医薬品業界の再編と
サワイグループの方向性
安定供給を最優先に、
業界構造の変化に着実に対応していきます
ジェネリック医薬品業界は、現在、大きな変革の局面を迎えています。2025年度より、国はジェネリック医薬品メーカーの供給実績などを評価し、薬価に反映する「企業評価制度」を導入しました。この制度は、情報開示の状況や生産能力拡大への投資、他社が製品供給を中止したときのバックアップ体制などを可視化し、医療機関や薬局が信頼性の高い企業を選択しやすい環境を整えることを目的としています。(詳細は「ジェネリック医薬品の市場環境」参照)
この制度の導入は、ジェネリック医薬品市場に大きな変化をもたらすと見ています。つまり、A評価を受けた企業に医療機関や薬局からの需要が集中し、それらの企業の市場シェアが高まることです。当社はA評価を獲得できる規模や体制を整えており、これからも選ばれる企業であり続けられると考えています。そのうえで、こうした変化が顕在化した場合に備え、引き続き生産余力を確保していくことが重要であると認識しています。特に、他社の供給が不足した際、どの程度まで代替供給の役割を担えるかが問われます。安定供給を支える存在であり続けることは、当社グループの最も重要な役割です。すでに生産能力を拡大する投資を戦略的に進めてきましたが、さらなる増強を図る必要があります。この業界内でのバックアップ体制の強化は、制度上の評価につながるだけでなく、患者さんや医療現場に対する責任を果たすうえでも、極めて重要であると認識しています。
当社グループは現在、約700品目の医薬品を生産しており、そのなかには市場シェアが3%以下の品目も一定数あります。市場シェアが低い品目の供給を止めれば、企業評価制度における相対的評価の向上につながる可能性がありますが、評価向上だけを目的に供給を止めることは医薬品メーカーとしてやってはいけないことです。患者さんに必要なお薬を確実に生産し続けることを前提に、製薬会社としての社会的使命と制度対応の両立を果たしながら、A評価を獲得することがなにより重要だと考えています。
さらに、2026年の薬価制度改革では、オーソライズド・ジェネリック(AG)及びバイオAGの収載時薬価が先発品・先行バイオ医薬品と同額へと見直されました。AGは、新薬メーカーから許諾を受けて製造・販売されるジェネリック医薬品であり、新薬の特許が切れた後も新薬メーカーが市場シェアを維持する戦略として活用されてきました。例えば、ある新薬がジェネリック医薬品に置き換わる場合、AGは通常50%〜60%程度のシェアを占めることになるため、当社グループのジェネリック医薬品が獲得できるシェアは最初から限られていました。しかし、今回の薬価見直しにより、産業構造に変化が生じ、ジェネリック医薬品業界が従来の少量多品目生産から大量生産型の構造に移行する道筋が示されたと受け止めています。今回の制度変更によってAGの上市が無くなれば、ジェネリック医薬品を一番手で上市するメリットがこれまで以上に高まると考えています。制度改革により売上と利益を伸ばせる可能性が広がったことは、当社グループの経営にとって非常に大きな意味を持ちます。
今後、企業評価制度の浸透に伴い、医療機関における採用品目の見直しが進むことが予想されますが、その影響がジェネリック医薬品メーカー各社の業績に現れるまでには一定の時間を要すると見ています。こうした変化のなかでは、各社が自らの事業のあり方を見直す局面を迎えることも想定されます。大きな変化が予想されるなかでも、当社グループは、計画どおり生産能力を引き上げ、安定供給という責任を果たしながら業界の変化にしっかりと対応していく所存です。
中期経営計画の進捗
生産体制と新製品開発を強化し、
経営目標達成を目指します
当社グループは長期ビジョン「Sawai Group Vision 2030」において、2030年度までに生産能力を年間250億錠以上に引き上げる目標を掲げています。日本の人口は減少傾向にありますが、薬を必要とする65歳以上の人口は今後も増加していくと見込まれます。さらに、今後5年間で約70億錠分の新薬の特許切れが控えており、業界全体として安定供給体制の確保が一層重要になると考えています。業界再編の動向によっては、当社グループが掲げる250億錠の生産能力でも需要に対して不足する可能性を考慮する必要があります。
増産体制の確立に向けては、当社グループ会社であるトラストファーマテック※1と沢井製薬の第二九州工場が重要な役割を担います。トラストファーマテックでは、生産を検討してきた新製品や大量生産品目について、2026年12月に発売が見通せる段階となりました。今後は工場をフルに稼働させて増産に取り組む考えです。第二九州工場についても新棟を建設し、他工場で生産ラインが少ない品目を移管する準備を進めています。これらの取り組みを着実に進めることで、必要な品目の供給力を高めていきます。沢井製薬の中手新社長には、品目移管を進めるうえで品質を重視する役割を担ってもらいたいと考えています。さらに、最優先事項である国内の安定供給を確実に果たしたうえで、将来的には東南アジアへの輸出についても視野に入れ、成長の可能性を広げていきたいと考えています。
当社グループは、中期経営計画「Beyond 2027」のなかで「事業戦略」と「経営基盤」のそれぞれに重要テーマを設定しています。「事業戦略」では、ジェネリック医薬品市場における着実な成長、ジェネリック医薬品ビジネスの持続性確立、成長分野への持続的投資の3つを掲げました。その戦略を進めるなかで、「ナルフラフィンの用途特許に関する特許権侵害訴訟」について、ご不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし本製品は、過去の判例を踏まえ、沢井製薬の製剤技術と独自の知財戦略を加えて上市したものです。知的財産高等裁判所ではこれまでの判例とは異なる考え方が採用され予期しない結果となりました。上告中の最高裁判所において過去の判例が重視されれば、勝訴した東京地裁判決と同じ結果になるものと考えております。当社グループとしては、今後も新製品を開発し、特許期間満了後の一番手上市として患者さんに届ける責任を果たしていく方針に変わりはありません。ただし、上市する時期やその際の不確定要素については、これまで以上に見極めたうえで判断していく必要があると考えています。
「成長分野への持続的投資」においては、デジタル技術の活用に注力しています。製薬業界では、医薬品の創製基盤となる技術や治療手段などのモダリティが変化し、医薬品開発を取り巻く環境も大きく変わりつつあります。当社グループが早い段階から参画してきたデジタルヘルス事業は、病気の治療や健康管理の支援において重要性が高まっており、いまだ明確なトップランナーが存在しません。私たちはこの事業にいち早く取り組んできたことで、NASH※2(非アルコール性脂肪肝炎)の治療支援を目的とした「治療用アプリ」や、減酒治療補助アプリ「HAUDY(ハウディ)※3」、片頭痛治療の非侵襲型ニューロモデュレーション機器「レリビオン®」など、医療関係者の皆さまのご期待に応える製品を揃えることができました。今後は、グループ会社であるFrontActとの連携をさらに深めながら、デジタルヘルスケアの分野での取り組みを一層強化し、存在感を高めていきたいと考えています。
- ※12026年5月22日の取締役会で「2027年4月1日付で沢井製薬を存続会社、トラストファーマテックを消滅会社とする吸収合併」を決議しました。
- ※2NASH: Non Alcoholic Steatohepatitis/「MASLD診療ガイドライン 2026」等においてMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)へと呼称変更されておりますが、治験実施計画書等の表記に基づき「NASH」と記載しております。
- ※3販売名:CureApp AUD飲酒量低減治療補助アプリ
サステナビリティ
人財育成を軸に、
持続的成長を支える基盤を強化します
当社グループはサステナビリティの重要課題として、持続的成長を支える人財の育成と定着に最も力を入れています。そのKPIのひとつとして、2026年度末までに従業員エンゲージメント指数を4.50とする中間目標を掲げ、働きがいのある職場づくりに取り組んでいます。この取り組みは沢井製薬の木村前社長の在任期間に始まったものであり、同社の企業理念である「なによりも患者さんのために」という視点のもと、タウンホールミーティング※4や日々の業務を通じて、自らの仕事の意義や社会的な役割を深く理解することに重点をおいてまいりました。中手新社長も信頼性保証本部長時代に同様の活動を強力に推進しており、今後も継続して注力すべき取り組みだと考えています。
一方、教育研修において、大幅な増員に対して十分な時間とコストをかけきれなかった点が課題であったと認識しています。生産部門に多くの人財を確保できた今こそ、研修を強化する最適なタイミングであると考えています。GMP※5研修に加え、自分たちの業務の前後のつながりを理解したうえで日々の仕事に取り組めるような研修を現在計画しています。これまでの「個人の自己研鑽」をベースとしながら、これからは「組織全体で学び合い、共に成長する」方針を打ち出しました。
そのためには管理職の役割が極めて重要です。まずは管理職への研修を重点的に進め、当社の重点課題である全社的な品質意識の底上げを図りながら組織力を高めていきたいと考えています。
さらに、社会とともに持続的に発展する総合ヘルスケアグループとして、気候変動への対応も重要な課題です。増産に伴うCO₂排出量の増加は避けられませんが、クリーン電力の導入などを通じて、ネットゼロの実現を目指しています。設備投資においても環境負荷に十分に配慮し、順次、CO₂排出量の少ない設備への更新を進めてまいります。
- ※4経営層と従業員による少人数での意見交換の場
- ※5GMP(Good Manufacturing Practice)は、医薬品の製造管理及び品質管理の基準。作業手順の明確化により人為的な誤りや汚染、品質低下を防ぎ、記録管理により後から検証できる体制を整える。日本では医薬品の製造販売の承認・許可要件となっている。
ガバナンス
新たな役員体制で、
ガバナンスの実効性向上に取り組んでいます
当社グループは、2026年6月25日付けで役員の改選を行いました。今回の体制見直しは、指名・報酬等ガバナンス委員会での議論を起点としています。同委員会では、当社グループの役員定年ルールを改めて見直し、厳格に運用するべきとの結論にいたりました。また、新たな中期経営計画の策定時期が近づいていたため、新体制のもとで計画を立案し、着実に実行することがふさわしいとの観点から役員体制を見直しました。沢井製薬の社長人事についても、取締役会での説明や個別面談の内容を踏まえ、指名・報酬等ガバナンス委員会において複数候補を比較検討しました。
その結果、中手を沢井製薬の新社長、並びにサワイグループホールディングスの取締役に選任しました。中手を選任した理由は、品質に関する確かな知見と豊富な経験、そしてそれを実行に移す強い情熱にあります。木村前社長は生産本部の出身として、工場を中心に大きな意識改革を推進してくれました。一方で、その改革をサワイの文化として確実に根付かせることは、なお道半ばです。トップダウンで変革を進める段階から、それを文化として定着させる段階へ移行するうえで、信頼性保証の業務に携わってきた中手が適任であるというのが、同委員会の判断でした。また、もう一人の新任取締役の中岡については、アメリカ事業撤退を主導し大きな成果を上げた実績に加え、法務やコンプライアンスなどの管理部門でも力を発揮してもらいたいとの考えから、沢井製薬及びサワイグループホールディングスの取締役に選任しました。
当社グループは、2025年6月から「監査等委員会設置会社」に移行しました。監査等委員会の委員長には、谷口社外取締役に就任いただいております。これまでの監査は決算に関する内容が中心でしたが、品質問題を経て、品質についてもこれまで以上に監査を強化する必要があるとの議論にいたりました。現在は、グループ経営監査室の日常的な監査のなかに品質に関するヒアリングも組み込み、現場の忌憚ない意見を吸い上げるようにしています。監査法人のご出身である谷口氏は委員長として適任であり、品質監査やモニタリング機能の向上につながっていることは、監査等委員会設置会社への移行による成果のひとつであると考えています。
以前の取締役会では、目標に対する進捗報告が中心でした。しかし、現在は、現場の生の声も広く共有されており、社外取締役からも有意義な取り組みとして評価をいただいています。行政処分を受けた会社として、品質確保の体制が構築・維持されているかどうかは、全取締役にとって極めて重要な関心事です。現場から「まだ改善が必要だ」との声が上がれば取締役会で真摯に議論し、改善に向けた具体的な方策を検討していきます。
また、取締役会の議論を一層活性化させるためには、議案に対して十分に意見をいただけるよう関連資料をできる限り早期に提供し、事前に十分に目を通していただくことが重要だと考えています。さらに、取締役会当日には社外役員連絡会を開き、議案の説明に加えて事前にご意見を伺うことで、取締役会での闊達な議論につなげる取り組みも行っています。
ステークホルダーへのメッセージ
自社で生産能力を高め、それを担う人財を育て、
企業理念の具現化に取り組みます
業界のリーディングカンパニーとして品質への責任と安定供給を果たすためには、なにより「人」が重要です。品質や信頼性保証の要を担う中手が人財育成を進め、サワイがさらに飛躍するための土台を築いていく、その思いを社長交代に込めています。当社は、設備投資を自ら行い、人財を自ら採用し、それらの教育も担うことで事業を支えています。人財が育ち、事業の効率が高まり、需要に応える生産体制を実現するまでには一定の時間を要するかもしれません。しかし長期的に見れば、このモデルこそが必ず正しい戦略になると信じています。現状は、当社グループにとって踊り場、あるいは谷間の時期かもしれませんが、この局面を乗り越えればグループ全体で人を育てるという強みが、必ず力としてあらわれてくると確信しています。
私たちが業界の中心的な存在であり続けるためには、従業員一人ひとりが自らの役割を自覚し、主体的に業務に取り組むことが欠かせません。グループの企業理念である「なによりも健やかな暮らしのために」を真に具現化すべく、これからも果敢に挑戦してまいります。サワイグループの今後の変化にご期待ください。
- 代表取締役会長兼社長
(グループCEO兼グループCOO) 
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