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国内GE事業

専務執行役員
沢井製薬株式会杜 代表取締役社長
木村 元彦

ジェネリック医薬品の安定供給と
自社の持続的な成長を両立させる体制構築に努めます

SWOT分析

Strength 強み
  • トップメーカーとしてのブランド力
  • 安定した財務基盤
  • 迅速な投資による生産能力増強
  • 一番手/単独上市が可能な開発力
  • 高付加価値製品のシェア拡大
Weakness 弱み
  • 生産能力の拡大に対応できる人財の確保と育成
  • 多品種少量生産による生産効率の制約
Opportunities 機会
  • ジェネリック医薬品業界の再編機運
  • 高齢化の進行による需要拡大
  • ヘルスケア・医療環境ニーズの拡大
  • ジェネリック医薬品の社会インフラ化
  • 適正価格販売を促す企業評価システム
Threats 脅威
  • AGの発売増
  • ジェネリック医薬品の供給不安による信頼の低下
  • 原材料や光熱費のコスト上昇
  • 毎年薬価改定による薬価引き下げ
  • 諸制度の変更

就任1年を振り返って –––
不適切試験の対応と生産能力増強を
両輪で進めました

2023年4月に判明した、沢井製薬九州工場におけるテプレノンカプセル50mg「サワイ」の安定性モニタリング溶出試験の不適切試験につきまして、多くの関係者の皆さまに大変ご迷惑をおかけしましたことを、心からお詫び申し上げます。

本事案が判明しましたのは、私が社長に就任した時期と重なり、以降、社内調査及びそれを受けての対外発表、取引先などへのご説明、社員との対話などに対応してきました。1日も早い信頼回復につなげるべく、現在、再発防止に向けた対策を着実に進めているところです。

再発防止策の一環として取り組んでいるタウンホールミーティングでは、各部門の社員に私の想いを生の声で伝えるともに、質疑応答を重ねています。社長就任前の生産本部長から社長へと立場が変わり、信頼性保証本部、研究開発本部、また、営業本部といった各本部の状況についても情報を吸い上げて課題を抽出し、現場の考えを経営にも活かしながら、課題解決に取り組んでいます。

並行して、ジェネリック医薬品の供給不足解消のため、生産能力の増強に取り組んできました。生産本部長時代から計画していた旧小林化工の生産設備と従業員400名を譲り受けてのトラストファーマテックの立ち上げと、第二九州工場の新固形剤棟建設は計画どおり進捗し、50億錠の生産能力がプラスされました。しかしながら、2024年5月13日の時点で、依然、249品目が限定出荷の状態であり、その大幅な解除と安定供給に向けた沢井製薬への期待に、引き続き応えていく責務があると考えています。

価格政策と、各部門の連携が
業績につながり、
明るい兆しが見えてきました

2023年度の国内ジェネリック医薬品事業の売上収益は、2022年度以降に発売した製品の売上伸長によって、前期比8.0%増加となりました。また、エネルギー価格や原価高騰の影響を受けたものの、コア営業利益は、前期比11.7%増となりました。

売上収益/コア営業利益
売上収益(国内)/コア営業利益(国内)

業績向上の要因としては、増収効果と流通価格政策の見直し、特に低価格品を中心に原価の高騰分を仕切り価格に反映する「価格政策」を実施したことが挙げられます。

価格政策については、営業本部が中心となって、取引先にご理解をいただくべく真摯に交渉してくれました。一方、生産本部は、不適切試験が判明したなかでも、通常の生産に加えて、トラストファーマテックの立ち上げ協力並びに第二九州工場新固形剤棟の建設対応など将来につながる業務にも尽力してくれました。また、2024年度の薬価制度改革では、急激な原材料価格の高騰や安定供給問題に対応するため、企業から再算定の希望があった不採算品目を対象に特例的に薬価の引き上げが適用されることになりましたが、この算定においては本社部門が当局と粘り強く交渉してくれました。当局との交渉に必要なデータをまとめ、提供してくれたのは生産本部です。このように、営業、生産、本社各部門がオーケストラの名演奏のように連携できたことが、2023年度の業績につながったと考えています。

一方、課題は、当面続くと見られる原材料価格の高騰です。高騰分を生産効率化によるコスト削減でカバーするには限界があり、今後も価格政策を実行せざるを得ません。さらに、生産能力向上に努め、より良い製品をより良いタイミングで出すことで、収益確保に努めてまいります。

  • 医療上の必要性が高いにもかかわらず、薬価が著しく低額であるため、薬価の引き上げ又は現行の薬価の維持が妥当と厚生労働省が判断した医療用医薬品のこと。

GE医薬品業界を取り巻く環境

社会的課題
社会的課題
目標数値と2024年4月の薬価制度改革の主な内容
目標数値と2024年4月の薬価制度改革の主な内容

信頼回復に向けて、
再発防止策を着実に実行し、
人財育成と仕組みづくりに
注力していきます

不適切試験のような事案を二度と発生させないための再発防止策を真に定着させるには、企業風土の改革が重要です。そこで、再発防止策のひとつとして、社長直轄の「企業風土改革プロジェクト」を立ち上げ、その進捗状況などは沢井製薬ホームページからもいつでも見られるように開示しています。また、私自身、取引先をはじめとしたステークホルダーの皆さまとお会いして、再発防止策について、その進捗をご説明させていただいています。

2030年度に向けた自社生産能力の増強
進捗状況を確認できるホームページ画面
https://www.sawai.co.jp/important_news/detail/17

従業員との直接対話の場であるタウンホールミーティングでは、医療機関との間に立つMRに対しても、生産現場での改善や再発防止策の進捗について説明と質疑応答を重ねてきました。そこで得た情報は、医療機関の方々からのご質問に答える材料にしてもらっています。

2030年度に向けた自社生産能力の増強
タウンホールミーティングの様子

再発防止に向けては、人財育成と仕組みづくりをしっかりとやっていく必要があります。仕組みづくりのひとつとして、研究開発本部では、生産品目のリストに優先順位をつけ、少量多品目生産の適正化等生産効率の向上やさらなる品質向上についての取り組みを進めています。

この不適切試験が起きた要因のひとつに、作業や知識の「属人化」がある、と私は考えています。そこで、属人化を防いで、不適切試験のような事案を未然防止すると同時に、生産・品質の効率向上を図るために、DX化を進めています。例えば、第二九州工場新棟には、分析機器から出たデータが自動的にインプットされ、計算されるようなシステムを導入し、人の介在を極力なくしました。今後、他の工場にも順次導入していきます。すでに導入している関東工場では、ミスの削減と試験効率の向上が同時に図られ、結果、安定操業にもつながりました。同様のDX化は品質保証部門でも進めており、逸脱処理やCAPA等の業務の進捗状況を「見える化」できるような品質管理システムを、2024年度に早期に導入する予定です。

「信頼回復」とは、私たちの取り組みを、外部のステークホルダーの皆さまに評価いただいてはじめて達成できるものです。その信頼回復はまだまだ道半ばであり、継続的にしっかりと再発防止策を進め、その結果を外部に発信していくことを怠ってはなりません。有事の際には、平時に何をしているかが活きてきます。今後、平時に移行した後も、いつなんどきでも、不祥事を二度と発生させない決意を保ち続けることが重要だと考えています。

先頭に立って、
信頼される企業基盤の確立と
事業成長を両立させていきます

2021年に中期経営計画(以下、中計)「START 2024」が始まった当時、ジェネリック医薬品事業は毎年の薬価改定で存続が危ぶまれる厳しい状況でした。しかし、振り返りますと、増産体制強化は計画どおりに進み、収益も一定の数字を上げることができました。また、長期的な安定供給実現のための価格政策にも着手でき、不採算品目の再算定などにも我々の声が反映されるなど、最終年には今後につながる良い兆しが見えてきました。

2024年6月に発表した新中期経営計画「Beyond 2027」では、品質確保と生産能力拡大のために経営資源を集中し、本中計期間の成長に加え、次期中計での飛躍に向けた体制確立を目指す期間と位置付けています。トラストファーマテックの生産効率向上とともに、第二九州工場ではさらなる需要増に対応できるよう次の投資も開始し、生産能力を当初計画の30億錠から35億錠に引き上げ、自社生産能力220億錠を目指します。ただ、現在、約17%の国内ジェネリック医薬品市場内シェアを2030年度までに目標の25%以上とするには、まだまだ生産能力の拡大が必要です。自社生産に加え、ジェネリック医薬品企業間の連携・協力も柔軟に検討していく考えです。

2030年度に向けた自社生産能力の増強
2030年度に向けた自社生産能力の増強
注) 生産能力の前提 : 現在の品目数について平日2交代で機械を稼働し続けた場合を想定。委託は含んでいない

さらに、新製品の着実な開発と上市も重要なテーマです。ジェネリック医薬品の数量シェアが80%を超え、開発の難しさが増すなかで、研究開発における特許戦略を含む中長期的な戦略が重要になってきます。何を開発し上市していくかの方針決定も、属人的ではなく、開発ポートフォリオを組織で共有・整理してシステマチックに進めていく必要があると考えています。

これらを実現するために、何よりも重要なのは「人財」の確保と育成であり、新中計でも「持続的成長を支える人財の創出」を重点テーマのひとつに掲げています。採用活動強化による人財の確保に注力するとともに、メンター制の導入や工場の人員配置見直しなど、人の定着に向けた取り組みを進めています。若年層の底上げを図るには、待遇面の改善も必要です。また、教育、特にGMP及びコンプライアンス教育ついては徹底していかなければなりません。

新中計は、長期ビジョン「Sawai Group Vision 2030」達成に道筋をつける重要な期間です。皆さまから信頼される企業基盤の確立と事業成長を両立させるために、従業員の士気を高め、私自身が先頭を切って進んでまいります。

中長期の定量目標(GE事業)
2023年度
実績
「Beyond 2027」目標「Sawai Group Vision 2030」目標
売上収益1,769億円2,190億円3,000億円
GE内
シェア/
販売数量
17.1%/157億錠20.5%/190億錠25.0%以上/240億錠
自社
生産能力
185億錠220億錠250億錠以上
  • 2024年6月見直し
専務執行役員
沢井製薬株式会社 代表取締役社長
木村 元彦

サワイグループホールディングス 統合報告書2024

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